窮地の安倍首相

大変なようですね。
ただ、新聞などを見ていると、気になることがあります。それは、安倍首相の政策や方針そのものに関する意見がほとんど聞かれないことです。
僕は、改憲論や教育政策など、安倍首相の政策自体に反対です。個々の理由はありますが、総じて言えば、国家主義的だからです。政治家が国民のために働いていないのは周知の事実でしょうが、それにしたって安倍首相はちょっとひどいです。改憲の内容についても、そこまで本気で考えているようには思えません。安倍首相が本気であるのは、「改憲する」ということだけです。似た言い方ですが、これらは決定的に違います。なぜなら、内容を本気で考えていないのに改憲をしたがるということは、つまり改憲さえすれば中身などどうでもいいということに他ならないからです。
地位と名誉にこだわるなんて、古すぎてもはや現実的でない生き方だと思うのですが、政治の世界ではまだまだ現役の考え方のようです。企業の社長などでは、上に立つ者は責任者であって、問題の責任はその責任者が取るべきだという考えがだいぶ浸透しているようです。政治の世界でも、このような考え方がもっと普及してくれればと思えてなりません。
ただ、指示もしないし安倍首相のやり方が好ましいとも思いませんが、それでも、今は別にやめるべきだとは思いません。だいたい、やめるというやり方は安易すぎます。もっと問題を解決しようとする姿勢を示すべきです。この意味で政治は難しいですね。一体、どれが解決すべき問題なのかはっきりしないからです。
僕は、ここであえて格差問題が最も重要であると主張します。格差問題は、年金問題と政治とカネの問題と比べて、存在感の薄い問題です。しかしながら、年金問題は基本的に単純な問題です。選挙の前や、選挙のときに述べてきたことが嘘でなければ、ある程度記録の整合性は取れるでしょう。それができないほどに記録が散逸していれば、政治家がどうがんばったところで解決はできないでしょう。できるかできないか、比較的単純な二元論で片付きます。問題としては限定的なのです。一方、政治とカネの問題は、もうどうにも片付かないことが目に見えています。重要な課題であることは間違いありませんが、自民党の政治家なんぞにこの問題が解決できるはずがありません。やるだけ無駄です。むしろ、やる気なんて全然ないでしょう。こんな細かいことでガタガタぬかしやがってケチな奴らだ、と思っているに違いありません。どうせ解決しない、あるいは解決できない問題には、労力を注ぐべきではありません。それこそ民主党が政権を取れば少しはマシになるかもしれませんが、基本的には同じ穴の狢でしょうから、無理でしょうね。
そんなわけで、相対的に問題として小さい年金問題や政治とカネの問題ではなく、格差問題を考えるべきなのです。第一、年金問題で困るのは、お金のない人たちです。お金があるなら、少額の年金など、もらえてももらえなくてもどうにでもなります。つまり、格差の問題を是正することによって低所得者の底上げを図れば、年金の問題も緩和することができるわけです。
格差問題の最大の注目点は、格差が拡大していることです。今のままならたいした問題ではないのです。むしろ、現状を維持できるなら十分と言えるでしょう。もちろん、今も自殺したりお金がなくて困っている人は大勢います。決して理想とは言えない状況ですが、解決すべきなのは格差問題だけではないので、もし現状を維持できるなら、これは許容範囲と考えるべきです。しかし、現状からさらに格差が拡大していくのは、もはや許容できない問題です。
だから、すべきことは簡単です。あえて高所得者の税金を上げたり、低所得者の税金を下げたりなくしたりする必要はないのです。ただ、これ以上の格差拡大につながるようなことをしなければいいのです。もちろん、積極策によって格差が是正できるならそれはより望ましいことでしょう。しかし、国外との関係など、他の問題を考えると、それは難しいと言わざるを得ません。これはグローバリゼーションの負の側面と言うべきでしょう。むしろ、グローバリゼーションに負でない面なんてなにかあるのか、と言いたくなりますが。
よく言われますが、国民の40%が下流に転落し、そこから10%の人間が搾取するような社会にしてはなりません。そのようなバランスを欠いた社会は、必ずや変革の波に襲われるからです。変わっていくことに耐えられる人はいいでしょう。しかし、混迷の時代が平和であった試しなどないのです。

追記

キーワードの「安倍晋三」というのを見てみました。ウェブの世界はずいぶん右寄りなので、さぞかし支持するようなことが書かれているのかと思いきや、批判的なことばかりですね。まあ、事実を列挙しているに過ぎないとも言えそうですが。主義主張を載せてもいいような気がします。